ガラスの製造技術の歴史

ガラスの製造

身の回りにあるガラス製品は、ガラスが歴史に登場した時から現在のような加工技術が成立していたわけではなく、長い時代をかけて徐々に発達してきたものです。そのため、ガラスの製造技術にはかなり長い歴史があると言えます。
そのガラスの製造技術がどのような段階を追って発達してきたのか、各時代における製造技法と歴史を見てみましょう。

コアテクニック

コアテクニックの技法は、コアと呼ばれる芯に熱したガラスを巻きつける形で器状に整えます。コアは主に金属の棒と粘土で作られており、粘土部分を器の雛形となるように事前に形作っておくことで、ガラスを成形できます。
なお、コアの部分は熱されたガラスを冷ました後、掻き出します。こうすることで、中身が空洞のガラスの器の完成となります。
コアテクニックが登場したのは紀元前15世紀から16世紀のエジプト・メソポタミアであり、人類の歴史で初めて登場した、ガラスを器状にする技法であると言われています。

キャスティング

器ではなく板状のガラスの作成を可能にしたのが、紀元前100年頃の古代ローマで発明されたキャスティングの技法です。
キャスティングは平らな砂型を作り、その砂型の中にガラスを入れて冷ますことで板状のガラスを作ります。この製法によって、人類は器の形状をしたガラスだけではなく、板ガラスを手にすることができました。

吹きガラス製法

コアテクニックよりも効率的なガラスの器を作れるようにしたのが、紀元前1世紀頃に古代ローマで登場した吹きガラス製法です。
吹きガラス製法は、筒状の金属の先端にガラスを付け、その筒を息で吹いてガラスを広げながら成形していきます。そして器の底になる部分にもう一つ金属の竿を付け、筒状の金属をガラスの器の先端を割る形で取り外します。割った後の器の先端を熱で成形し器を完成させます。
この吹きガラス製法は現代でも使われているガラスの器作りの製法であり、この技法の登場によって器状のガラス製品は著しく作りやすくなりました。
<ガラス作りの技法のページ>でも、さまざまな技法を紹介しています。

クラウン法

4〜7世紀頃に登場したクラウン法によって、薄い板ガラスの作成が可能になりました。

クラウン法は、筒状の金属にガラスを付け、膨らましていきます。ある程度の球体状になれば、ボンテと呼ばれる金属の竿を筒と反対側につけ、筒の方をとりはずします。筒を取り外した方は口が開いた状態になりますので、それを熱しながら広げるようにして成形し、さらにボンテを回す遠心力を使って一気に円形状に薄くします。これがクラウン法の概要です。

クラウン法の薄い板ガラスにより、窓へのガラスの使用が多くなりました。しかし、遠心力を使う点で作業者の力によって板ガラスの薄さが変わること、中心部分にボンテの跡が残るなどのデメリットもあり、現代のような整った板ガラスを作れたわけではありませんでした。

円筒法

クラウン法よりも質の良い、薄い板ガラスを作れるようにしたのが、17〜18世紀に登場した円筒法です。
これも吹きガラスの製法を応用し、筒にガラスを付けた状態で左右に振りながら息を吹いて細長くガラスを伸ばします。そして円筒状になったガラスの両端を切り取り、端から端にかけて直線の切れ目を入れます。これを再度、加熱した釜に入れて伸ばして成形します。
円筒法によって、均一で薄く、ボンテの跡が残らない板ガラスの作成ができるようになりました。

垂直引き上げ法

1900年代に入ると、ガラスの製法も人力ではなく機械化によって大量生産が行われるようになります。その先駆けであったのが、垂直引き上げ法です。
専用の装置を用いて、熱したガラスをデビトーズという薄い板に挟むような形で垂直に上げていき、冷却することで板ガラスの効率的な生産を可能にしました。

ロールアウト法

1920〜1930年代に登場したロールアウト法も、専用機によって板ガラスを大量生産できる技法の一つです。垂直引き上げ法と少し似ていますが、大きな違いとして挙げられるのが二つのロールの間に加熱したガラスを流し込むという点です。
現在でも、網入りガラスなどの特殊な板ガラスを成形する際に用いられています。

フロート法

現代における一般的な板ガラスの製造技法であるのが、フロート法です。この技法は1950年代にイギリスで生まれました。
溶融金属である錫を利用し、比重の軽い熱したガラスを錫の上に浮かべる形で成形を行うのがフロート法の大きな特徴です。この特性から、特に磨きの作業をしなくても、画一的で綺麗な板ガラスを作ることが可能になりました。
フロート法も先述したような専用機械を用いて、効率よく大量生産ができるようになっています。

まとめ

ガラスは様々な製造技術が徐々に進化し、今の美しいガラスを作れるようになるまで発展してきました。
ガラスの製造技術の歴史を振り返れば、人類の技術進化の歴史としても見ることができるかもしれません。